キリシタンに対する火あぶりの刑は、1本の太柱に手足を後ろで縛りつけ、周囲に薪を積んで、初めは遠火にてあぶり、次第に薪を受刑者の縛られている柱へ寄せていく。後ろ手で両足に縛りつけた藁縄(わらなわ)は1本だけで、それも緩(ゆる)く、背後には薪を積まず、いつでも逃げ出せるように退路を確保してある。燃えさかる灼熱(しゃくねつ)の苦痛に逃げ出せば、それは棄教したことと見なされ、そこで刑の執行は取りやめられる。刑を受ける者にとっては何より殉教への意志が試されることとなっていた。(『
出星前夜』
飯嶋和一)