今日になってみれば、プラトンのいうことは大まちがいである。アリストテレスが正しく指摘しているように、われわれの左右両腕は、生まれつき同じでは【ない】のである。大多数の人が右利きだというのは、人類の遺伝的傾向であって、信頼するに足る歴史によるかぎり、昔からそうなのである。左利きのほうが普通だという社会は、文化人類学者にもまだ知られていない。少数の部族についてさえ、そのようなことは知られていない。エスキモーにしても、アメリカ・インディアンにしても、マオリ人にしても、アフリカ人にしても、みな右利きである。(『自然界における左と右』マーティン・ガードナー:坪井忠二、小島弘、藤井昭彦訳)