こがらな人である、とわかってはいたが、いかにも短軀(たんく)であった。長身の子胥(ししょ)とならべば童子のようにみえるはずであるが、
 ――その威は、尋常ではない。
 と、むしろ子胥が畏縮(いしゅく)した。
 晏嬰(あんえい)はよく光る目をもっていたが、その眼光は相手を威圧するような力をもたず、意外なほど邪気がなかった。容姿全体に軽みがあり、淡々としてそこに在(あ)る、という感じであった。が、子胥の目には、それが怖かった。
(『湖底の城宮城谷昌光