脳の消費するエネルギーの量はほかの器官と比べてとても大きく、大きな脳をもつことには相当に大きなコストがかかります。ヒト(成人)では、脳が体全体に占める体積は2%程度ですが、消費するエネルギーは全体の20%にも上ります。そのような高いコストがかかるにもかかわらず、類人猿がとくに大きな脳を獲得・維持してきた理由は、コストに見合うだけの必要があったからだと考えざるを得ません。そしておそらくその必要とは、群れ(社会集団)の増大に伴う、情報処理量(認知、判断、言語、思考、計画など)の飛躍的な増大だったと考えられます。(『モラルの起源 実験社会科学からの問い』亀田達也)