思えば当時の民間人の国家意識は強いものであった。日清戦争後の三国干渉に憤激した志ある人々は、軟弱な政府を頼むに足らずと、悲壮な気持を抱いて続々と大尉陸へ渡り、各自思うところに愛国の熱情を傾けていたのであった。或はまた、ロシア軍に蹂躙された満州の市場に日本商品の販路を獲得しようとする商人や実業家も、政府機関に援助を求めるわけでもなく、単身ウラジオストックに上陸してロシア軍の動静を探りつつ、満州深く足跡を印したのであった。(『曠野の花 新編・石光真清の手記(二)義和団事件石光真清〈いしみつ・まきよ〉:石光真人〈いしみつ・まひと〉編)

日本近代史