宮崎●サンガの下部構造を考える上で、もう一つ重要なポイントは、こんな虫のいい要求を受け容れてくれる世間が近辺に存在していることです。

佐々木●だからお寺というのは、必ずある程度栄えている町のそばになければならなかったんです。飢餓に喘いでいる地方や人里離れた山奥なんかにあったら、托鉢で食べていけなくなる。要するに、余剰の富がある場所でなければ仏教は絶対に生きていけないんですね。

(『ごまかさない仏教 仏・法・僧から問い直す佐々木閑〈ささき・しずか〉、宮崎哲弥

仏教
 20世紀を代表する歴史学者であるアーノルド・J・トインビー(1889-1975年)は「12~13歳くらいまでに民族の神話を学ばなかった民族は、例外なく滅んでいる」と言い遺しています。この言葉は、日本人が日本神話を学ばなくなったら、日本民族は滅亡する運命にあることを示唆(しさ)しています。(『現代語古事記』竹田恒泰)

古事記
 満州事変の始る少し前、私はフランスへ行こうとして、シンガポールに来て、一人波打際に立った。
 海岸には大きな椰子の木が1~2本、斜めに海に突き出ていて、遥か向うには2~3軒、床の高い土人の家が見える。私は寄せては返す波の音に聞き入るともなく聞き入っていた。そうすると突然、如何とも名状し難い強い懐しさの情に襲われて、時を忘れてその中に浸った。今でもこの時を思い出して、懐しさの情とはこれを言うのかと思っている。土井晩翠はここをこう歌っている、「人生旧を傷みては千古替らぬ情の歌」。
 アンリー・ポアンカレーは「思想は長夜の一閃光にとどまる。されどこの閃光こそ一切なのである」と言っている。私の人生に表現せられた私の情緒を見ていると、やはり「長夜の一閃光」のように思えてくる。その閃光の中心がこのシンガポールの印象である。
(『紫の火花岡潔
 わたしは数学をやっています。数学の研究とはどういうことをしているかといいますと、情緒を数学という形に表現しているのです。(『風蘭岡潔
 身体の中の血が、すべて新しくなったような気がした。(『キアズマ近藤史恵
 立ち去った後でさえ、この部屋には彼の威圧感が残っている。息苦しくなるほどだ。(『スティグマータ近藤史恵