ただし、「空」という単語は、お釈迦さまの時代にはそれほど特別視されていなかったことも確かです。空と同時に、蜃気楼とか、無常という単語も使う。空の代わりに、苦、苦しみという単語も使う。夢という単語も使います。
大乗仏教では空というのが一つの哲学思想体系として発展していくのですが、
初期仏教では、ただ現象の姿を説明する一つの単語にすぎないのです。現象の本当の姿を説明するためにいろいろな単語を使っていて、そのなかに空という単語もあるだけです。べつに空という単語を一つだけ取り出して、独立した思想体系にすることはなかったのです。(『
般若心経は間違い?』
アルボムッレ・スマナサーラ)