Q 事実ではないはずのことを、なぜ確信をもって記憶する人がいるのか?
A 人間の行動は記憶が支えていると言ってよいだろう。人間は過去に学んで、将来を変えていく生物である。つまり、記憶の意義は、経験を記憶し、生き残るのに適した行動をより多くとらせることにある。そのため心の中には、あるがままの事実の記憶より、行動に便利な記憶が形成される傾向がある。個別の具体的な記憶よりも、少しは体系化された、より抽象的な記憶のほうが、将来の行動を決定するのに役に立つのだ。
(『人はなぜだまされるのか 進化心理学が解き明かす「心」の不思議』石川幹人)