しかし
仏教の場合、それは並の分裂ではない。本来の阿含仏教から見れば極端に性格の異なる教義が、次から次と現れ、ついには思想、宗教の一大集積場の観を呈するに至る。それは単一の宗教が時とともに少しずつ変容し、亜種を生み、多様化していくといった穏和な状況とはほど遠い、一種の内部爆発とも呼ぶべき現象である。初期阿含仏教と後期
密教を比較するなら、仏教と銘打った一つの宗教が長旅の果て、最後にどれほどかなたの地に至って臨終を迎えたか実感として理解できよう。(『
インド仏教変移論 なぜ仏教は多様化したのか』
佐々木閑)