実は、安久工機はずっと、従業員5~6名の町工場である。そんな小さな工場でどうして、と思われるにちがない。人工心臓器ひとつを見ても、さまざまな金属機械加工や樹脂系の加工が必要なのは素人でもわかる。小さな工場に機械を並べただけでできるわけがない。それを可能にしているのが、町工場の集積地大田区の利点で、安久工機にはいつでも協力してくれる工場が50社ほどもある。大田区は自転車でひとまわりすればたいていの仕事ができるほど多様な技術を持った町工場があることから、自転車ネットワークとか路地裏ネットワークと呼ばれるネットワークが可能な町である。(『
どっこい大田の工匠たち 町工場の最前線』
小関智弘)