人を斬(き)る飄(かぜ)であった。
 小さな真空をもった大きなうねりが、突然、すさまじい速さで■(はし)ってきたようで、それにまともにふれた者は裂かれたにちがいない。
 士会(しかい)の手にあった戈(か)は、おもいがけない衝撃をうけ、とっさにかれは跳びすさった。
(『沙中の回廊宮城谷昌光