窓からの逆光で見えにくかった彼の容貌がようやくはっきりした。まじめさ、いかめしさ、融通(ゆうずう)のきかなさ、閃きのなさを混ぜ合わせて、粘土で捏(こ)ねあげたような、叩きあげの現場の警官の典型的な容貌だった。要するに、警視庁管轄だけでも何千人もいるにちがいない警部のひとりだった。(『愚か者死すべし』原リョウ)