以上が大体牧口(常三郎)の価値論である。彼は新カント派の影響を受けて価値論を考えながら、結論においては新カント派の理想主義と全く違った功利主義の価値論を作り出したのである。このような彼の価値論はベンサムの価値論に近づいている。ベンサムが功利主義の立場から快楽の計算表を作ったように、彼は価値の実践的な評価法を作っている。たとえば「好き嫌いにとらわれて利害を忘れるのは愚である。いわんや害悪を忘れるをや」、「目的の小利害に迷って遠大の大利害を忘れるのは愚である」、「損得にとらわれて善悪を無視するのは悪である」などという10の価値評価の基準、あるいは人間の行為の基準を作っているが、いまだかつて日本の哲学者がこれ程までに抽象的な理論を、明確な民衆の生活の指導原理としたことはなかった。(『美と宗教の発見 創造的日本文化論』梅原猛)
創価学会