普通私たちは時間の経過を線的なものと考える。時間旅行ではこの線が閉じて円をなす。何人かの人が前後に並んでまっすぐな線をなして歩いているのを想像すればよい。だれが後ろで、だれがほかのだれかの前かというはっきりした観念がある。これは線的な時間に似ている。ある出来事が未来なのか過去なのかが常に曖昧さなく言えるのだ。
さて今度は、列をなしているこの人たちが円を描いて歩いているとしよう。【局所的】には、だれが前あるいは後ろにいるのかはっきりしているように見えるが、円全体について考えると【全体的】には「前」や「後ろ」という概念は意味をもたない。どの人も、ほかのどの人の前でも、ほかのどの人の後ろでもある。決まった順序があるだけだ。
(『宇宙論大全 相対性理論から、ビッグバン、インフレーション、マルチバースへ』ジョン・D・バロウ:林一、林大訳)