ともあれ、この一件がイエス一派と他のやくざ組織との軋轢の始まりであった。その後、次のような些細な事件が発生する。それは安息日に関わるイザコザであった。
安息日とはかつてヤハウェ大親分が決めたしきたりで、週に一度、一切の仕事を放棄する日のことである。ユダヤ組の者はもちろん、ユダヤ組縄張り内の民衆もこれは遵守せねばならない。元々は家畜や奴隷を憐れんだ大親分が、彼らに定期的な休暇を与えるために制定したらしく、存外、ヤハウェ大親分にはこのような一面もあるのだが、そこはやはりやくざ者である。根っこの苛烈さに変わりはなく、自分の命令を無視し安息日に薪(たきぎ)を拾った男がいたと聞くと烈火の如くに怒り狂い、民衆に命じてその男を石で打ち殺させたのであった。
(『仁義なきキリスト教史』架神恭介)
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