ナポレオンは、ワーテルローの戦いに敗れても死刑にならず、セントヘレナ島に流されただけです。その地でも、尊敬された処遇を受けています。幽閉の身とはいえ、食事などの生活の世話をされ、すべては整っていました。そして死後は、パリのオテル・デ・ザンヴァリッドという非常に立派な建物の中心に祀(まつ)られています。
 対して、東條英機はどうでしょう。東條自身は、東京裁判では毅然とした態度をとり、諸兄されるまで実に立派でした。しかし日本国民は、アメリカとの戦争に負けると、情けないことにアメリカに尻尾を振り、自分たちとともに戦って苦労した東條を裏切ったのです。
(『ナポレオンと東條英機 理系博士が整理する真・近現代史武田邦彦