しりぞくことは死を意味する闘争の世界――それがヨーロッパである。それは同時に与えることが餓死を意味する世界でもある。このような条件下で数千年間鍛えられた人間性が、現在のヨーロッパ人のなかに生きている。いわば彼らは、ヨーロッパの歴史的風土のなかでそれを骨肉化してきたものなのだ。勝負に関し、かれらが私たちには想像外の徹底さと執拗さを持ちつづけているのは当然といわねばならない。(『敗者の条件会田雄次〈あいだ・ゆうじ〉)