竹山道雄●それから、戦争に負けたときは、非常なショックだった。私はそれを思い出すたびに一種の感慨を持つんですけれども、和辻先生という方は古今東西に通じる大学者であったし、人間もりっぱな方で、一時の流行に従ってものを考えたりいったりすることは絶対になかった。その和辻先生でさえ、戦後、この敗戦は、日本歴史全体が間違ってたから、日本文化そのものの責任であるといったような考え方をされた。『鎖国』という本は、りっぱな研究だと思いますが、あれの前後にワクがついている。つまり徳川氏が精神的怯懦のゆえに、積極的に外へ進み出ないで、中へひっ込んでしまった。その計算書をいまわれわれは突きつけられているのである、ということが書いてあります。私はそういうふうに解することはできない。日本人の原罪のせいだというふうに解するのはおかしいと思うんです。(『石田英一郎対談集 文化とヒューマニズム』石田英一郎)