奴隷貿易という叙事詩は長きにわたり、実に様々な状況のもとで繰り広げられた。一人の主人公がいるわけではなく、ドラマをつくりあげているのは何百万もの人々である。15世紀末から19世紀末まで、400年も続いた奴隷貿易を通じて、1240万人が奴隷船に積まれ、大西洋の「中間航路」を越えて、何千マイルもの距離の間に散らばる数百の荷揚げ場所へと運ばれた。悲惨な航海中に、180万人が命を落とし、遺体は船につきまという鮫へと向かって投げ捨てられた。生き延びた1060万人は、殺人的なプランテーション機構の、血塗られた奈落の口へと投げ込まれた。そして人々はそこで、考えられるかぎりの、あらゆる抵抗を試みることになるのである。(『奴隷船の歴史』マーカス・レディカー:上野直子訳)