マックス・ハーフェラール』は著者ムタトゥーリ(本名ダウエス・デッケル)が小説の形を借りて19世紀のオランダ領東インド植民地における植民地支配の実態を内部告発し、植民地政策を痛烈に批判した異色の作品である。小説とはいえ全くのフィクションではなく、その内容は大筋では史実に合致している。そのため出版にあたっては当初から政治的な思惑に巻き込まれ、結局著者の意図したものとは少し違った形で、つまり利害関係者が特定しにくいような形で世に出た。しかし関係者の間ではたちまちセンセーションを引き起こし、やがては19世紀最大の問題作として評価を得て、読み継がれていった。今では近代オランダ文学の最高傑作として、押しも押されもせぬ地位を確立している。(訳者はしがき)(『マックス・ハーフェラール もしくはオランダ商事会社のコーヒー競売ムルタトゥーリ:佐藤弘幸訳)