人の情緒は固有のメロディーで、その中に流れと彩(いろど)りと輝きがある。そのメロディーがいきいきしていると、生命の緑の芽も青々としている。そんな人には、何を見ても深い彩りや輝きの中に見えるだろう。ところが、この芽が色あせてきたり、枯れてしまったりしている人がある。そんな人には何を見ても枯野のようにしか見えないだろう。これが物質主義とよばれる人たちである。(『春風夏雨岡潔〈おか・きよし〉)