ミトコンドリアは細胞内にある小さな器官で、われわれがもつほぼすてのエネルギーをATP(アデノシン三リン酸)の形で生成する。平均的に言って、各細胞に300~400個存在し、人体全体では1京(けい)個(1京は1兆の1万倍)に達する。事実上すべての複雑な細胞には、ミトコンドリアが存在する。ミトコンドリアは細菌に似ていて、それは見かけだけではない。かつては自由生活性の細菌だったが、20億年ほど前、自分より大きな細胞のなかでの生活に適応したのである。(『ミトコンドリアが進化を決めたニック・レーン:斉藤隆央訳)