乱取りが始まると、あちこちで阿鼻叫喚(あびきょうかん)の地獄絵図が現出する。
 立技(たちわざ)では板敷きの剣道場やコンクリート敷きの玄関まで引きずっていかれ、叩きつけられることもあった。彼らは巻き込んで投げ、投げたあと私たちの体に思いきり体を乗せてくるので、その瞬間、死ぬのではないかと思うほどの痛みと恐怖を感じた。寝技でも体力に差がありすぎ、すべての技を封殺された。
 私たちは壁にぶつけられ、鉄製ロッカーにぶつけられ、絞め落とされて失禁した。怒らせると肘(ひじ)や頭突きも飛んできた。
(『七帝柔道記増田俊也〈ますだ・としなり〉)

北の海