昭和の軍人のなかで、天才といわれるのは、陸軍中将石原莞爾たった一人であろう。天才というものは、百年に一人しか生まれないとすれば、石原将軍のやってのけた満州事変こそ、世界をひっくりかえすような大事件であった。
 とうじ石原は、関東軍司令官の作戦参謀であった一中佐にしかすぎない。この一中佐が、世界をおどろかせ、アジアの運命を決定する大事業を決行したのだった。
(『日本陸軍英傑伝 将軍暁に死す岡田益吉