中西●じゃあ『文藝春秋』昭和29年12月号に載った「私が張作霖を爆殺した」という、あの河本告白記というのは誰が書いたかというと、これは河本の義弟で作家の平野零児が書いている。彼は戦前は治安維持法で何度か警察に捕まっている人なんです。その人が河本の一人称を使って書いたわけです。その内容も当時、ほとんど誰も確認せずにそのまま活字になっているわけですね。
 ですから、張作霖爆殺が関東軍の仕業だったというのは、当時の流言蜚語、それから東京裁判での田中隆吉証言、そしてこの文藝春秋告白記と称するものに基づいているといえます。一番のポイントは当時の日本国内に、「張作霖爆殺は関東軍がやった」ということを信じさせるような充満した雰囲気が、事件が起こる前からあったということです。
(『歴史の書き換えが始まった! コミンテルンと昭和史の真相』小堀桂一郎、中西輝政

日本近代史対談