日本の家紋によく使われる十大紋は「鷹の羽、橘、柏、藤、おもだか、茗荷、桐、蔦、木瓜、かたばみ」であるとされている。
このうち鷹の羽を除く九つは、すべて植物である。日本の家紋は植物をモチーフにしたものが多い。
一方、ヨーロッパの紋章を見ると、獅子や鷲、ユニコーンなど、いかにも強そうな動物が居並んでいる。日本にも強そうな生き物はいそうなものなのに、日本人は、どういうわけか食物連鎖の底辺にある植物をシンボルとしているのである。
見るからに強そうな生き物ではなく、何事にも動じず静かに凛と立つ植物に日本人は強さを感じた。そして、自らの紋章として選んだのである。
(『弱者の戦略』稲垣栄洋〈いながき・ひでひろ〉)