逆にいえば、フェアでない行動をとった悪人が罰せられるのを見る場合、この同情反応は小さくなると想像できます。実験結果は驚くべきもので、男脳と女脳では様子が違っていました。
 女性の脳では同情反応は40%ほど減るのですが、男性ではほとんど完全に【消失する】のです。これに代わって、男性では意外な脳部位が活性化しました。「側坐核」(そくざかく)です。側坐核は報酬系、つまり、快感をもたらす場所です。ざまを見ろ――おそらく罰を受ける姿を眺めて悦(えつ)に入(い)っているのでしょう。実際、側坐核の反応が強い人ほど「反則行為には大きな罰が妥当だ」と判断する傾向が強いこともわかりました。つまり、男性は悪人の行った不正に対して強い制裁の気持ちが表れるのに対し、女性は、相手の善人悪人にかかわらず、罰を受けて【つらい思い】をしている人に感情移入する傾向が強いわけです。
(『脳には妙なクセがある 池谷裕二