ヨーロッパその他の諸外国から見て明治維新以来の日本の発展は、久しく「突然変異」か、もしくは「突発現象」のように見られていた。
 彼らは外から見て、江戸時代以前の歴史を知らない。ましてや、日本が7~8世紀に「第二の軸の時代」を突破して、ユーラシア大陸から切り離された独自の文明圏を孜々(しし)として築きあげてきた、長いひたむきな歴史にいたっては、まるきり知らない。
(『国民の歴史西尾幹二

日本近代史
「君たちが真剣なら私は何時間でも対話する用意があります」(クリシュナムルティ)『クリシュナムルティ・水晶の革命家』高岡光
 また、「グローバル化」が叫ばれる21世紀の世界では、どの国どの地域の人々であれ、また好むと好まざるとにかかわらず、自らの文明意識に支えられた明瞭なアイデンティティ感覚が求められるようになる。この点で、新しい世紀の門口に立って、世界を見渡しても現在の日本人ほど惨めな状況に立たされている人々は他にないように思う。なぜなら、いまこの国では、上述の「本当の歴史」とは何か、という歴史叙述をめぐる問題の混迷とともに、自らの属している文明、この日本という国のトータルな歴史観が、「戦後」という重圧にほとんど完全なまでに押し潰されてしまっているからである。(中西)『日本文明の主張 『国民の歴史』の衝撃西尾幹二中西輝政

日本近代史
 ランダム・ウォークというのは、「物事の過去の動きからは、将来の動きや方向性を予測することは不可能である」ということを意味する言葉である。(『ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理』バートン・マルキール:井手正介訳)
 学問において、性質にねじれやゆがみをもっている者は、まずその奥義(おうぎ)に達しない。(『楽毅宮城谷昌光
 すなわち郭隗昭王(しょうおう)に問われて、つぎのように答えた。
「帝者は師とともに処(お)り、王者は友とともに処り、覇者は臣とともに処り、亡国の主は役(えき)とともに処ります」
 人君として至上の帝者には師があり、その下の王者には友があり、その下の覇者には臣があり、国を滅亡させる者には僕隷(ぼくれい)があるだけである。
(『楽毅宮城谷昌光
 天下の宰執(さいしつ)というべき薛公(せっこう/孟嘗君)に会ったというただそれだけの経験が、肚(はら)のなかにどっしりとすわっている。薛公は人にけっして恐怖をあたえない。むしろ、この人には以前どこかで会ったのではないかという親しげなものやわらかさをただよわせている。天下の信望を集める人とは、あのようでなくてはなるまい、と楽毅は痛感したことがある。(『楽毅宮城谷昌光
 田氏の家は矮(ひく)く狭い。しかし暗くもなく貧しくもない。
 田氏の妻がもっている豊かさと明るさとが、そうさせている。楽毅はかの女をみて、
 ――ああ、女とは、一家の宝なのだな。
 と、つくづく思った。
(『楽毅宮城谷昌光
 見なければならないものは、スローガンでも理念でも、ましてや正義でもない。その背後にあって利益を得るのは誰か、である。為政者およびその体制を支えている階層や集団の利益を守るための偽装、擬制でしかないことを、20世紀、あるいは太古からの人間の歴史が教えている。(『「正義」を叫ぶ者こそ疑え宮崎学
 辺り一帯に乱雑に打ち棄てられているのは、逆運に苦しむ阻害者の切ない思い、
 あるいは、心ない言葉に傷つきながらも、結局は隷従してしまう愚者の長過ぎる吐息、
 あるいはまた、ろくでもない病魔に魅入られた正直者の骨と肉とを容赦なく蝕む追懐の情。
(『見よ 月が後を追う丸山健二
 グレゴリー・ペレルマンというそのロシア人数学者は、査読つきの専門誌に論文を発表しなかった。そして、ほかの数学者たちが自分の証明を綿密に分析した論文を、きちんと検討することはおろか、それについて論評することすら拒否したのだ。世界中の一流大学から降るように舞い込んだポストの申し出もすべて断った。2006年には、数学における最高の栄誉であるフィールズ賞が授与されるはずだったが、彼はこれも辞退した。そしてそれ以降、ペレルマンは数学者ばかりか、ほとんどすべての人と連絡を断ってしまったのである。(『完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者マーシャ・ガッセン:青木薫訳)
 物質の世界に必須栄養、例えばビタミンが在るように、情報の世界にも、生きるために欠くことのできない〈【必須音】〉が存在する。(『音と文明 音の環境学ことはじめ大橋力
甲野●このあいだ工業デザイナーの秋岡芳夫(あきおか・よしお)先生をお訪ねしたとき、いろいろうかがいまして、面白かったのは、畳がなぜこの大きさなのかという話です。あれは、織田信長が決めたとおっしゃるんです。つまり平時には敷いておいて、いざというときに持ち上げて盾にする。鉄砲玉がきたときの盾になるんです。身が隠れるだけの高さ、幅、それと厚みが当時の火縄銃なら貫通しないということであの大きさを決めたんですね。(『古武術の発見 日本人にとって「身体」とは何か養老孟司甲野善紀
 すさまじいのは逸勢の娘の妙冲(みょうちゅう)である。妙冲は泣きながら父のあとを追いつづけ、京都から三ケ日町まで歩き、病死した父を埋葬したあと、墓前に庵(いおり)を結んで9年をすごした。無実の罪で死んだ父の無念が娘にそうさせたのであろう。それについて書かれた鴨長明の『発心集』(ほっしんしゅう)の「橘逸勢之女子配所にいたる事」は、涙なしでは読めない。(『他者が他者であること宮城谷昌光
石原莞爾
 という名には、さまざまなイメージが錯綜する。
 一方の評価として、満州事変をひきおこすことで、日本を戦争へと導いた、戦争犯罪人の一人だとするものがある。
 他方には、世界の趨勢にさきがけて、軍備の放棄をよびかけた平和主義の先駆だという見方もある。
 20倍にのぼる敵軍を壊滅させた天才的な戦略家である、とも云われ、狡猾な陰謀家とも評されている。
 霊的な資質をもった予言者とよばれると同時に、世界史の終焉を結論した精緻な理論家ともみなされている。
 近代文明のダイナミズムを信じた国家主義者であり、コスミックな感性から都市文明の解体を宣言したユートピア主義者でもあった。
 皇室を尊奉する帝国軍人であると同時に、日本という国家を超える理想と正義のヴィジョンを持っていた。
 ある歴史家は、日本においてヒトラームッソリーニに匹敵するただ一人のカリスマだと云い、晩年身近に接した婦人は、さながら菩薩のような温容だったと語る。これらの要素のすべてが、いくらかは石原莞爾に該当している。
(『地ひらく 石原莞爾と昭和の夢福田和也
 声は人間がもつきわめて強力な道具であり、意思の疎通において何より重要なものと言っていい。声は体の一部であると同時に心の一部でもある。生まれてすぐに経験することや、社会の慣習という強い圧力によって、私たちの声は影響を受ける。声は内なる世界と外なる世界をつなぐ架け橋だ。心の奥深くにある隠れ家から出発して、公の領域へと出ていく。声を通じて、自分が自分をどうとらえているかがあらわになり、どうなりたくないかと思っているかまでもが暴かれる。声はいろいろな情報を教えてくれる。恐れ、力、不安、卑屈、活力、真偽。他者についても自分自身についても、それらを知る手がかりを与えてくれる。(『「声」の秘密』アン・カープ:横山あゆみ訳)
 おそらく最も重要な点は、金融のグローバリゼーションによって、先進国と新興国のマーケットの区別があいまいになったことだろう。中国は、アメリカの銀行になった。具体的に言えば、共産主義者が債権者に、資本主義者が債務者になった――。これは、画期的な大変革だ。(『マネーの進化史』ニーアル・ファーガソン:仙名紀訳)

マネー
「人を死なせるには、何アンペア必要だと思いますか。交流電流で100ミリアンペア。それだけであなたの心臓は細動を起こす。あなたは死んでしまうんです。100ミリアンペアは、1アンペアのたった10分の1ですよ。電気店で売ってるごく一般的なヘアドライヤーは10アンペア消費する」(『バーニング・ワイヤージェフリー・ディーヴァー:池田真紀子訳)
「才介、頼みがある。末次の身代を継いで後、……俺がもし朋輩と呼ぶに値せんようなザマになった時には、お前の手で、斬ってくれ」
「断る。お前なんか斬ったら刀が穢(けが)れる」
(『黄金旅風飯嶋和一

キリスト教
 バイアスがそれほどの力を持つのは、人間がその存在に気づかないからだ。(『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学シャンカール・ヴェダンタム:渡会圭子訳)

脳科学認知科学
 だが超越的秩序の宗教は、人間の勝手な思い込みの産物である。ある特定の風土の下で生まれた妄想を人類の普遍的救済原理であると考えることに、そもそも問題があったはずである。それだけではない。この妄想としての超越的秩序の宗教を最高のもの、文明のシンボルであるとみなすヤスパースアイゼンシュタットの文明論は、自分たちの欲望を貫徹するために仮想的をでっちあげ、妄想としての世界秩序を力ずくで強要することを容認し、間接的に支援した。(『一神教の闇 アニミズムの復権安田喜憲
 金銭に対する考え方は、17世紀になると大きく変化した。1694年から、アダム・スミスが『国富論』を世に問うた1776年の間に、銀行が発行した紙幣の総額が、当時流通していた金属貨幣を初めて上回った。(『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う宋鴻兵〈ソン・ホンビン〉)
 さて、ペットボトルを石油から作り消費者の手元に届けるまでの石油の使用量は、ボトルの大きさにもよりますが約40グラムです。
 ところが、このボトルをリサイクルしようとすると、かなり理想的にリサイクルが進んでも150グラム以上。(ママ)つまり、4倍近く石油を使うことになります。資源を節約するために行うリサイクルによって、かえって資源が多く使われるという典型的な例です。資源が多く使われるのですから、その分だけゴミも増えます。
 もし「リサイクル率」を計算するときに、目の前にあるペットボトルだけの回収率ではなく、運搬する車や人の労力など、リサイクルに使うあらゆるものを計算に入れてリサイクル率を出せば、この矛盾はもっと早くわかったと思います。
(『リサイクル幻想武田邦彦
 呼吸に関わる筋肉は身体の深部にあるものが多く、それゆえ、ふつうはコントロールしにくいものです。ところが、呼吸法の精度を高めていけばいくほど、それらの筋肉もコントロールできるようになると同時に、それらの筋肉を支配している部分の脳の働きもよくなるのです。(『だれでも「達人」になれる! ゆる体操の極意高岡英夫
 自己改革の最大の敵はルーティン(型にはまった行動)である。(『悩めるトレーダーのためのメンタルコーチ術ブレット・N・スティーンバーガー:塩野未佳訳)

トレーダー
 定職をもたないエルデシュはほとんど金を持っていなかったが、なけなしの金をすべて他者への奉仕のために使った。金がなくて勉強を続けることができない大学院生のことを聞くと彼は小切手を送った。マドラスで講演をするときは、その報酬をかならずインドの偉大な数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャンの未亡人に捧げた。エルデシュはラマヌジャン本人にも妻にも会ったことはない。しかし、ラマヌジャンの公式の美しさが若き数学者であるエルデシュを興奮させたのである。(『My Brain is Open 20世紀数学界の異才 ポール・エルデシュ放浪記ブルース・シェクター:グラベルロード訳)

ポール・エルデシュ
 良いインディアンとは、死んだインディアンだけである。
     フィリップ・H・シェリダン
(『ベトナム戦争のアメリカ もう一つのアメリカ史白井洋子

戦争アメリカ
 1848年にコンコードでおこなわれたソローの講演を記録したこのエッセイ(※『市民の反抗』)は、20世紀になって全世界で読まれるようになった。それは20世紀のはじめロシアのトルストイに影響をあたえ、また、インドの独立運動を指導したM・ガンジーは、彼の非暴力不服従運動を展開するにあたって、このエッセイを肌身はなさずもちあるいていたという。さらにそれは第二次世界大戦中の反ナチズムの抵抗運動や、M・L・キングが指導したアメリカの黒人公民権運動、ベトナム反戦運動などにも大きな影響をあたえた。(『プラグマティズムの思想魚津郁夫

ガンディー
「俺はたくさん人を殺してきた。この手は血に染まって、洗っても洗っても染(し)みがとれない。この修行者はこんな俺に本当のことを言ってくれている。この人についていこう」
 彼は手にもっていた弓や剣をすべてがけから投げ捨てて、自分の額をブッダの足につけてひれ伏して言った。
「あなたのことばを聞いて、自分が行なってきた恐ろしいことを断じてやめなければならないという気がしてきました。どうか弟子にしてください」
 ブッダはそのとき
「来たれ、修行僧よ」
 と一言、言われた。そのことばだけで、彼はブッダの弟子として修行僧になったのである。
(『ブッダ物語中村元、田辺和子)

仏教
 人間は根源的な生存欲を中核(コア)とし自己を構築しています。さらに、生存欲から立ち昇るさまざまな欲求、願望によって自己中心の世界を構築します。一般の普通人は、自己のつごうに合わせて世界を切り取り、レンガを積んで家を建てるようにして世界像を構築するのです。この世界像が偏狭で利己的であればあるほど争いが起こります。犯罪が起こり、人種差別、不当な収奪、戦争まで起こります。これが我々の「現実」といっていいでしょう。したがって「現実」とは、個人の欲望のつくり出した虚構にすぎません。我われは決して「ありのままの世界」を見てはいないのです。(『ブッダの人と思想中村元、田辺祥二、大村次郷写真)

仏教
 エルサレムではキリスト教徒の巡礼や礼拝は許されていたから、本当は戦争をする理由なんてなかったんだ。それなのに十字軍はエルサレムを攻撃して陥落させると、イスラム教徒やユダヤ教徒の大虐殺をやる。「浄化」のためにね。(『まんが パレスチナ問題山井教雄

パレスチナ
 そのうち、見難い涅槃についてはつぎのように説かれています。
「比丘(びく)たちよ、私は、そこに来ることも、行くことも、止(とど)まることも、没することも、生まれかわることも説きません。それは拠り所のないもの、生起のないもの、所縁(しょえん)のないものです。これが、すなわち苦の終わりです」(『自説〈ウダーナ〉第八章「第一涅槃関係経」』)
(『パーリ仏典にブッダの禅定を学ぶ 『大念処経』を読む片山一良

仏教
 エコノミストとは、きのう自分が予測したことがなぜきょう起こらないのかを、あした知る者。 ――ローレンス・J・ピーター
(『伝説のトレーダー集団 タートル流投資の黄金律カーティス・フェイス楡井浩一訳)

トレーダー
 このように「盲点」を隠蔽しあう関係が成立すると、人間は合理的思想を喪失します。そうなると、人間はもはやロボットになってしまいます。人間がロボットになると、もう自律性も創造性も何もなく、集団の相互作用が生み出す力に翻弄されるようになります。こうして暴走が起きるのです。(『原発危機と「東大話法」 傍観者の論理・欺瞞の言語安冨歩
 あるときお釈迦さまは、大きな森の前で落ち葉を手ににぎると、弟子たちにこう話されました。
「自分が知っていることはこの巨大な森ほどたくさんありますが、あなた方に教えたのは、この手のひらの上の葉っぱほどのことです」と。そのことばにつづけて、「私はあなた方が苦しみをなくして解脱するために必要なことは、すべて教えています」ともおっしゃったのです。
(『死後はどうなるの?アルボムッレ・スマナサーラ

仏教
マーラ:子孫がいる人は子孫で喜ぶ。牛(豊富、財産という意味)がいる人は牛で喜ぶ。執着に値するものがあることこそが人間の喜びです。何もない人に喜びもありません。

ブッダ:子孫がある人は子孫で悩む。牛がある人は牛で悩む。執着に値するものがあると、それは人間の悩みになる。無執着の人には悩みはありません。

(『苦しみをなくすこと 役立つ初期仏教法話3アルボムッレ・スマナサーラ

仏教
 ヨーロッパは500年にわたってアジア・アフリカを搾取した。しかし彼らはけっして謝罪しないし、賠償金も払わない。500年のヨーロッパが謝罪しないのに、3年半の日本が謝罪するのは、外交音痴だ。もしこれがイギリスや中国だったら、「海部首相は利敵行為をした。彼は売国奴である」と罵倒されるに決まっている。英・蘭・仏はなぜ謝罪も賠償金も払わないのか、研究しなさい。(ヤン・ヴィダル夫人〈元新聞記者〉)『世界が語る大東亜戦争と東京裁判 アジア・西欧諸国の指導者・識者たちの名言集』吉本貞昭
 生きることは「感覚があること」、そしてその感覚は「苦」なのです。そして、この「苦」が消える瞬間はありません。ただ変化するだけです。
 たとえば、1時間ぐらい座っていると腰が痛くなってしまいます。そこで立ったら、立った瞬間は「ああ、楽になった」と思うかもしれませんが、実際に起こっていることというのは「座っている苦」から「立っている苦」への変化です。一瞬、それまでの「座っている苦」が消えますから、幸福に感じるかもしれませんが、それは勘違いです。ただ、新しい「苦」に乗り換えただけのことです。
 私たちは瞬間、瞬間に、「苦」という感覚を味わっているのです。
(『怒らないこと2 役立つ初期仏教法話11アルボムッレ・スマナサーラ

怒り仏教
 怒りは自分を壊し、自然を破壊し、挙句の果てには他人の幸福まで奪います。ですから、自分を甘やかしてはいけません。我々は怒りをなんとかするよう、真剣に努力すべきです。「怒らないこと」は個人の課題でもあり、生命全体からの要請でもあります。(『怒らないこと 役立つ初期仏教法話1アルボムッレ・スマナサーラ

仏教
 ライプニッツの壮大だが実現しなかったビジョンは、ある天才的かつ有効な洞察に基いている。それは、複雑な概念がどれだけあるにせよ、人間の抱く単純な概念は、数が有限にちがいない(単純な概念は終わりに行き着く)うえ、不連続である(暑さによるぼんやり、ムード、雲を通して見る月と違って、自然の境界がある)ということだ。
 有限個の単純な概念しかなければ、思考のなかで何らかの組織原理が働いているにちがいない。
(『史上最大の発明アルゴリズム 現代社会を造りあげた根本原理デイヴィッド・バーリンスキ:林大訳)

アルゴリズム
 ロブのFXに対する基本スタンスは「リスク・レス/トレード・レス」。つまり「より小さなリスク/より少ないトレード」というものです。(『超カンタン アメリカ最強のFX理論ロブ・ブッカー、ブラッドリー・フリード)

為替
 アメリカ社会主義は、ユダヤ人やドイツ系移民がつくった都市部の小さなサークルからスタートした。それがしだいに広まって国全体に根づきはじめ、全国で100万ほどのアメリカ人が、社会主義系の新聞を読むまでになっていた。(『学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史ハワード ジン、レベッカ・ステフォフ編:鳥見真生訳)
 アメリカ奴隷制は、二つの点で歴史上もっとも残酷な制度だ。まず、もっと金もうけをしたいという果てしない強欲さによって、隆盛の一途をたどっていったということ。さらに、その根本には、白色人種が主人で、黒色人種は奴隷だ、という強い人種的偏見が巣くっていたということだ。この二つの理由のため、アメリカの奴隷は、人間以下の存在とされたのである。(『学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史ハワード ジン、レベッカ・ステフォフ編:鳥見真生訳)
佐藤優●なぜ、いま大川周明なのかということですが、現在、世界を新古典経済学派的な市場原理主義が席巻しています。「自由競争」というのは、実は最強国に有利な論理であって、19世紀であればイギリス、20世紀であればアメリカしか利さない。つまり帝国主義の論理だということです。そこに気づくかどうかが、いま問われていると思います。(『アメリカの日本改造計画 マスコミが書けない「日米論」関岡英之、イーストプレス特別取材班編)
 江戸の識字率は、世界でもまれに見るくらいの高さでした。江戸市内だったら、ひらがなに限っていえば、ほぼ100パーセントで、当時のロンドンやパリと比べても群を抜いています。絵草紙(えぞうし)でもなんでも、漢字の脇に仮名が振ってあれば読めました。ただし、黙読ができないので、声に出して読まないと頭の中に入っていきません。高札場(こうさつば)などに御触(おふ)れが立つと、集まった人々が各々声に出して読むので、輪唱のようになってしまいます。貸本(かしほん)などでも、座敷の中でひとりが読んで、女性が出るところになると「じゃあ、女将(おかみ)。ここから読んでくれ」と、バトンタッチして、それをみんなが聞くというように4~5人で楽しみました。(『お江戸でござる杉浦日向子監修、深笛義也構成)
 植民地ヴィクトル・ユゴーの関係はふかい。この国民作家は、アフリカの植民地化をヨーロッパ文明の崇高な使命と考えており、フランスはユゴーの作品を携えて世界に浸出した。ホンデュラスの農民にとってユゴーは、ちょうど近代ヨーロッパにとってのホメロスに当たり、「文明」の起源にして象徴のようなものだった。(『宗教vs.国家 フランス〈政教分離〉と市民の誕生』工藤庸子)

宗教
 だから冬の間中は寒さだけが敵と思えたのに、それが終わるやいなや、私たちは飢えていることに気づく。そして同じ誤りを繰り返して、今日はこう言うのだ。「もし飢えがなかったら!……」
 だが飢えがないことなど、考えられない。ラーゲルとは飢えなのだ。私たちは飢えそのもの、生ける飢えなのだ。
(『アウシュヴィッツは終わらない あるイタリア人生存者の考察プリーモ・レーヴィ:竹山博英訳)

ナチス強制収容所
「このように、最高の頭脳がシステム化して結合する。それが未来の支配のかたちだ。ひとつの意志がここから全国民を動かすのだ。それが人間の頭脳であろうと、頭脳のような機械であろうと、やることは同じだ」(『1999年以後 ヒトラーだけに見えた恐怖の未来図五島勉

ヒトラー
 強制収容所のような環境で、自殺ということがほとんど囚人の念頭にのぼることがないのは、ひとつには、自殺の前提となる最小限度の隣人の関心がまったく期待できないからであり、自殺者を犠牲者として、または自己の運命の予徴として見る視点が、完全に囚人から脱落しているためである。にもかかわらず、仮にもし、自殺という行為が囚人のあいだで起るとすれば、それはただある種の不用意によって起るにすぎない。(『望郷と海石原吉郎岡真理解説)

詩歌シベリア抑留
 お釈迦様は、興味のない人をつかまえて説法はしません。普段は一人静かにいて、訪ねてきて質問する人々がいれば、抜群の言葉で答える。論争で負かそうと思って来た人には、冷や汗が出て体がガタガタ震えるくらいまで言葉を返します。お釈迦様は悟りをひらいたとっても、借りてきた猫みたいに聖者ぶっていたわけではありませんでした。(『沙門果経 仏道を歩む人は瞬時に幸福になるアルボムッレ・スマナサーラ

仏教
 丹とは、道教でいう長生のための薬、あるいは生命エネルギー。田はそれを作る所の意味で、丹田は気を溜め、充実させ、また必要に応じて活用するための大事なエネルギーセンターである。(『気功革命 癒す力を呼び覚ます盛鶴延
 日時計は倒潰して、数知れぬ白い石のかけらが残った。鳥たちは、もはや岩と砂に塞がれた古代の空に埋もれて飛び、その歌声は跡絶えた。死んだ海の底を砂塵(さじん)が流れ、風蝕の昔語りを再演せよと風に命じられては、陸地にまでも押し寄せた。都市は深い眠りのなかに横たわり、沈黙の穀倉には時が貯えられ、池や泉には静けさと追憶のみがあった。
 火星は死んでいた。
(『とうに夜半を過ぎてレイ・ブラッドベリ:小笠原豊樹訳)
饒舌のなかに言葉はない。言葉は忍耐をもっておのれの内側へささえなければならぬ。結局はそのような認識によって、私は沈黙へたどりついた〉(「強制された日常から」)『シベリア抑留とは何だったのか 詩人・石原吉郎のみちのり畑谷史代

詩歌シベリア抑留強制収容所
 ひとつの真実があった
 たくさんの饒舌があった

 冷えびえとした秋の林の中で
 饒舌は吹きこぼれ
 真実は裸で立っていた

(『塔和子 いのちと愛の詩集塔和子

詩歌
 小さな勝利を、積み重ねる。やはりわたし程度の資金量では、1回に1000万円を超す勝利を目指すには、無理があった。
 背伸びした博奕を打たない。リスクを冒さないのは最大のリスクなのだが、だからといって無謀なリスクを冒してしまえば、この稼業では生き残れない。
 ――生きているのは健康によくない。
 と指摘したのは、マーク・トウェインだった。健康によくするためには、死ねばいいのである。
(『賭けるゆえに我あり森巣博
 世界じゆうを見渡すならば、皆さんは、人間感情のあらゆる小さな進歩も、刑法のあらゆる改正も、戦争減少へのあらゆる歩みも、有色人種の待遇改善へのあらゆる歩みも、奴隷制度の緩和も世界におけるあらゆる道徳的進歩も、世界の組織化された教会によつて、徹頭徹尾反対されてきたことを発見なさるでありましよう。わたしは敢えて申しますが、諸教会として組織されたキリスト教徒の宗教は、世界の道徳的な進歩の主なる敵であつたし、今なおそうであります。(『宗教は必要かバートランド・ラッセル:大竹勝訳)
 精神の動揺は行動や思考を乱します。だからこそ日本でも古来から座禅などさまざまな修行を通して心を落ち着けようとしてきたのでしょう。ロシア特殊部隊で採用されている武術、システマでも「キープ・カーム」(穏やかであれ)と教えられます。辞書によるとカーム(Calm)は「静けさ」「平穏」「無風状態」といった意味。つまり凪の海のような静かな心境で、目の前の仕事やトラブルに対応するのが一番確実とされています。(『ストレス、パニックを消す! 最強の呼吸法 システマ・ブリージング北川貴英
 生物においてはエネルギーを使えば時間が進むのだが、これは、生物がエネルギーを使って時間をつくり出しているのだと私は解釈している。エネルギーとは働くこと、つまり、働いて仕事をすると時間が生み出されてくるのが生物の時間なのである。(『「長生き」が地球を滅ぼす 現代人の時間とエネルギー本川達雄

時間論
 生物体というものがはなはだ不思議にみえるのは、急速に崩壊してもはや自分の力では動けない「平衡」の状態になることを免れているからです。(『生命とは何か 物理的にみた生細胞シュレーディンガー:岡小天、鎮目恭夫訳)

エントロピー
 春秋時代というのは、その期間が320年ほどあり、それぞれの君主がそれぞれの国で、最高の権力者でありえたのは、はじめの100年間くらいであったろう。その期間がすぎると、各国の権柄(けんぺい)は大臣たちに握られはじめた。大臣たちの意識には、――われわれが君主を君主たらしめているのだ、という誇色が濃厚となり、かれらは国家に奉仕し君主に忠誠をつくすことより、自家の栄貴を第一に考えはじめた。(『夏姫春秋宮城谷昌光
 この本は、殺戮されたおびただしい人びとに代わっておこなう【魂の叫び】であり、権力にしがみつこうとする人びととは想像上の差異を有するという理由で、マチェーテ〔山刀〕で切り裂かれた人びとへの鎮魂である。またこれは、典型的な冷戦期の平和維持部隊のための規則書(ルールブック)では想定されていなかった課題に直面し、有効な解決法を見出すことができなかった一人の司令官の物語である。あたかもその懲罰であるかのように、自分の部隊の何人かが命を落とすのを、一つの民族集団を絶滅させようとする試みを、胎内から出てきたばかりの子供が殺されたのを、薪のように積み上げられた無数の手足を、陽の光にさらされて腐ってゆくばらばらにされた死体の山を、私はこの眼で見たのだ。(『なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか PKO司令官の手記ロメオ・ダレール:金田耕一訳)

ルワンダ
社会心理学社●この実験は当時でも大きな話題となり、テレビ局のインタビューを受けたミルグラムは、次のように述べています。「この実験で1000人以上の人々を観察し、実験結果から得た情報および印象から判断しますと、もしナチス・ドイツが建造したような強制収容所をアメリカ国内の市街に設置したとして、それがどの地域であっても、職員は十分に確保できるでしょう」とね……。(『感性の限界 不合理性・不自由性・不条理性高橋昌一郎
 欧米の人々に聞いてもらいたいと思い、彼はアフリカで生まれた優れた音楽を録音した。しかしテープレコーダーを使っているとき、(アーサー・)アルバーツは社交上のトラブルに遭遇した。自分の声が再生されるのを聞いた西アフリカの原住民が、アルバーツに「舌を盗まれた」と文句を言ったのだ。アルバーツは鏡を取り出し、その男に舌は無事だと納得させることで、なんとか殴られずにすんだ。(『あなたの知らない脳 意識は傍観者であるデイヴィッド・イーグルマン:大田直子訳)

認知科学V・S・ラマチャンドラン
「紙に書いた(オン・ペーパー)解決策はいつも立派に見える」(『流刑の街チャック・ホーガン:加賀山卓朗訳)
 我々は豊かにならんがために貧しくなった。(『貧しさマルティン・ハイデガー、フィリップ・ラクー=ラバルト:西山達也訳・解題)
 表情には姿勢と同じように、いわゆる生得的といわれる反応が見られる。たとえばアイブル=アイベスフェルトの観察記録にあるように、生来盲目の少年にも、笑顔のとき、開眼者と同じような反応が見られる。笑顔をもたらす言葉がけ(たとえば、好きな女の子いる?)に対して、他人(あるいは自分)の笑顔を生まれてから一度も見たことがないにもかかわらず、図に見るような充分に了解できる笑顔をするのである。(『動きが心をつくる 身体心理学への招待春木豊
 苦しみには正当な理由があると信じているとき、あなたは現実から完全に遠ざかっている(『探すのをやめたとき愛は見つかる 人生を美しく変える四つの質問バイロン・ケイティ:水島広子訳)
 とすれば、キリスト教の開祖は、イエス・キリストでも、パウロでもなく、コンスタンティヌス大帝である、としなくてはなりません。コンスタンティヌス大帝が主導し、意向を働かせて27篇を選ばせたという歴史的事実を見れば、キリスト教の開祖は彼しかいないのです。(『現代版 魔女の鉄槌苫米地英人
 これに対して、ミレーが描いたのは、家族や農民など、解釈するものではなく現実に存在する人々の姿だった。つまり、自らも幼い頃から過酷な労働を体験して育ったミレーは、美術アカデミーが評価する歴史画や宗教画に登場する様式化された人間像を追求することよりも、懸命に生きる生身の人間を描くことのほうに芸術的な価値を見出したのだ。そして、この点が当時としては革新的だったわけである。(『誰も知らない「名画の見方」高階秀爾
 徴税(税金を取り立てる)の不公平となると、根本的に違ってくる。
 それは【不公平であるだけでなく、不正でもある】からである。
 特に、デモクラシー諸国に於いては致命的である。
【デモクラシー諸国に於いては、税金の遣り取りこそ国と国民との最大のコミュニケーションである】からである。
【税金こそ、デモクラシーの血液】である。
(『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし小室直樹

消費税
 たとえば、あなたが小麦を作ったとしよう。この小麦は、あなたが作ったものであり、まずは、あなたの所有物ではある。しかし、小麦の価格(値段)は、市場法則(例。需要と供給)によって決まるのであって、あなたが勝手に決められない(決められるともかぎらない)。これが市場法則というものである。(『小室直樹の資本主義原論小室直樹

資本主義
 死の問題を解決するというのが人生の一大事である、死の事実の前には生は泡沫の如くである、死の問題を解決し得て、始めて真に生の意義を悟ることができる。(『思索と体験西田幾多郎

思索
 まるでアル中患者だ、と自分で思う。禁酒の誓いを立てたアル中患者は、酒に近づかなければいいのだと言い聞かせながら、酒屋まで車を走らせ、買わなければいいのだと言い聞かせながら店に入り、呑まなければいいのだと言い聞かせながら酒を買うという。
 そして、結局は買ってきた酒を飲む。
(『犬の力ドン・ウィンズロウ:東江一紀訳)
 このように考えれば、良心、規範が消えた理由は、父性の喪失である、ということになる。
 父性とは何か。肉親としての父親にかぎらない。その本質は、権威(オーソリティ)である。
(『悪の民主主義 民主主義原論小室直樹
「議題の一項目の審議に要する時間は、その項目についての支出の額に反比例する」(『パーキンソンの法則C・N・パーキンソン:森永晴彦訳)

【の法則】
 社会をみると、犯罪の80%を20%の犯罪者が占めている。交通事故の80%を20%のドライバーが占め、離婚件数の80%を20%の人たちが占め(この人たちが結婚と離婚を繰り返しているため、離婚率が実態以上に高くなっている)、教育上の資格の80%を20%の人たちが占めている。
 家庭をみると、カーペットの擦り切れる部分はだいたいいつも決まっていて、擦り切れる場所の80%は20%の部分に集中している。これは衣類についても同じだろう。侵入者防止の警報装置があるとすれば、それが誤作動する80%は、あらゆる問題のうちの20%が原因で起こる。
(『新版 人生を変える80対20の法則リチャード・コッチ:仁平和夫、高遠裕子訳)

【の法則】
「論理」とは【論争のための方法のこと】を指す。
 それでは、一体、誰と論争をするのか。人と人との論争、と読者は思われるであろうが、究極的には、「神と人との論争」なのである。
(『数学嫌いな人のための数学 数学原論小室直樹

数学
 遅い昼食をとろうと腰をかけ、稼いだ金を数えているうちに、しだいに深い疑念にとらわれ始めた。それはいままで感じたことがなかったもの――恥辱だった。平気で嘘をつき、お世辞を言い、たぶん何でもしたにちがいない自分に愕然とした。明らかに、物を売ることは私にとって精神を腐敗させる元凶である。おそらく物を売るためには人殺しさえ厭わなかったかもしれない。私は概して堕落しやすく、そうであるからこそ誘惑を避けることを学ばねばならなかった。(『エリック・ホッファー自伝 構想された真実エリック・ホッファー
「だが、誰かが本気できみの人生を破滅させようとしたら、きみにできることは何一つない。人はコンピューターが言うことを鵜呑みにする。コンピューターが、きみには借金があると言えば、きみには借金があるんだ。きみと保険契約を結ぶのは危険だと言えば、きみと保険契約を結ぶのは危険なんだよ。きみには支払い能力がないと言えば、たとえ現実には億万長者だとしても、きみには支払い能力がない。人はデータを信じる。真実なんか意味を持たないんだよ」(『ソウル・コレクタージェフリー・ディーヴァー:池田真紀子訳)
 一人の絵描きとして、いつも私は普通の兵隊とは別の空間に住んでいた。生命そのものが危機にさらされている瞬間にすら、美しいものを発見し、絵になるものを発見せずにはいられなかった。頭の中に画面を想像してはモチーフをそこにおさめるための構図を考えつづけていた。人の死に直面しているときでも、頭の中でそんな作業をくりかえしている自分に、絵描き根性のあさましさを感じて思わずぞっとするときもあった。しかし、この絵描き根性があったがゆえに、ほかの兵隊たちが完全な餓鬼道に陥っているようなときにも、一歩ひいたところに身を持していることができたのだろう。絵描きであったことは、私の特権であり、私の幸せであったと感謝している。(『シベリア鎮魂歌 香月泰男の世界立花隆

シベリア抑留強制収容所
 彼にとって、この世における成功と不成功は何の関係もない。また、万物に対し、彼が何らかの期待を抱くこともない。(一八)
 それ故、執着することなく、常に、なすべき行為を遂行せよ。実に、執着なしに行為を行えば、人は最高の存在に達する。(一九)
(『バガヴァッド・ギーター上村勝彦訳)

バガヴァッド・ギーターヒンドゥー教
 羅什訳『法華経』の当初は二十七品であったが、それは少しずつ形成されたものらしく、だいたい三類に分かれるという(もとの二十七品による。田村芳朗、中公新書『法華経』)。

 第一類 方便品第二-授学無学人記品第九 紀元50年ころ
 第二類 法師品第十-嘱累品第二十一、序品第一 紀元100年ころ
 第三類 薬王菩薩本事品第二十二-普賢菩薩勧発(かんぼつ)品第二十七 紀元150年ころ

(『インド仏教の歴史 「覚り」と「空」竹村牧男

仏教
 宗教が語る死後の世界とか、死についての考え方というのは、すべて妄想であると考えなければいけません。なぜなら、生きている人で死後の世界を見た人は誰もいないからです。(『「生」と「死」の取り扱い説明書苫米地英人
 歴史理性のもろさを示しているとすれば、私たちの経験が教えているのは、無知偏見の放置は助長につながり、助長は憎悪の勝利をもたらすということである。(A・M・ローゼンタール)『戦争における「人殺し」の心理学デーヴ・グロスマン:安原和見訳

戦争
 KKK(キュー・クラックス・クラン)の歴史は、南北戦争が始まった年の暮れに遡る。テネシーのプラスキーという小さな町で生まれたこの組織は、戦争で負けた南部白人の間にたちまち拡まっていった。頭からすっぽりと白い頭巾をかぶったクランたちは、戦争の結果自由となり、急に発言力を増した黒人たちと、北部から入りこんでいた利権漁り屋などに対して、暴力的なリンチをくり返した。南部一帯に勢力をもったこのKKKを鎮圧するために、連邦政府は1870年の初めにいくつかの法律を作らなければならなかったほどである。(『生活の世界歴史 9 北米大陸に生きる』〈『生活の世界歴史 9 新大陸に生きる』改題〉猿谷要

アメリカ
 同性愛者だと自己定義する行為が人を不快にさせると考えるには、次のような問いに答えていかなければならないだろう。すなわち、そのような発話によって、どんな関係や絆が攻撃されたり脅かされたりする可能性をもつかということである。(『触発する言葉 言語・権力・行為体ジュディス・バトラー:竹村和子訳)
 どの検閲局にも、未決事項(脚本、楽譜、手書きの文書、造形芸術作品、ポスターの下書き)がところ狭しと積みあげられ、あらかじめ設けられていたある支局などでは、積みあげられた山が崩壊し、下敷きとなった課長が窒息死するという事件が起こった。救急隊の到着が間に合わなかったのだ。(『天使の蝶プリーモ・レーヴィ:関口英子訳)
「ヨーロッパの起源は戦争という鉄床の上でたたき出されたのだ」(『ヨーロッパ史における戦争マイケル・ハワード:奥村房夫、奥村大作訳)
 人間一人が生きていくのに必要な食料が穀物で年間約150キログラムとすると、数字の上では133億人分が確保されていることになる。
 ところが、その多くは人間のためだけでなく家畜の飼料に回され、先進国の食肉用として消費される割合が高いのが現状だ。
 その結果、生産地の国々に食料が回らず、先進国では飽食状態となる構造が生まれた。この偏在が是正されないかぎり、食料不足と飢餓人口の増大には歯止めがかけられないのだ。
(『面白いほどよくわかる 「タブー」の世界地図 マフィア、原理主義から黒幕まで、世界を牛耳るタブー勢力の全貌世界情勢を読む会編著)
 インディアン達は忘れない。マサソイトの後をついだ、その子のキング・フィリップが、侵略者としての白人達の、際限のない横暴に対して乾坤一擲の反撃を試みて一敗地にまみれた時、プリマスの白人達は、彼の死体を分断し、その首級をプリマスの街頭にさらして、そのまま25年に及んだことを、インディアン達は忘れない。(『アメリカ・インディアン悲史藤永茂

アメリカキリスト教
手嶋●いかなる形であれ、自らの陣営に戦略上の真空地帯を生じさせてはならない――ロンドンの外交専門家の言葉です。周辺から乱気流が流れ込んで天下大乱のもとになるからです。(『動乱のインテリジェンス佐藤優手嶋龍一
【どんなささいなことでも、どうしたら人が喜び、どうしたら人が幸せになるのかというふうに考えて行動していく】ことが、皆さんのこれらからの人生をどんどんよくしていきます。(『あとからくる君たちへ伝えたいこと鍵山秀三郎
 一方、A級戦犯には罪が問えないと、もっとも分かりやすく論述したのは、ハーバード大学の若き弁護士、ブレイクニー陸軍少佐でした。「戦争は、国際法が認めた適法行為である。原子爆弾を落とした者達が裁こうとしているのが、この裁判だが、彼らも殺人者ではないか」と発言しました。すると、日本語への同時通訳が、ただちに停められ、被告人の耳には届きませんでした。日本語の速記録には「以下通訳なし」と付記されたのですが、恥ずべきインチキ裁判だった歴然たる証拠です。(『日本人を狂わせた洗脳工作(WGIP) いまなお続く占領軍の心理作戦』関野通夫)

日本近代史
 文化は滅びないし、ある民族の特性も滅びはしない。それはただ変容するだけだ。滅びるのは文明である。つまり歴史的個性としての生活総体のありようである。(『逝きし世の面影渡辺京二

日本近代史
「人の上に立つには――」
 と、ことばを切った(し)は、足もとに目をおとし、
「たとえば、ここに植える菽(まめ)のいうことが、ききとれるようになることだ。天の気も地の気も、その葉や茎にうつり、やがて結びあって実となる。いくら故実(こじつ)を識っても、名なし草にひとしい民の、声なき声を聴きとる耳はそだたぬ。【まめ】に教えてもらうがよい」
(『天空の舟 小説・伊尹伝宮城谷昌光
 このころ、桑の木は神木で、「桑からなにが生れるか」と問われた者の十人中十人が、「日」(じつ)すなわち「太陽」とこたえたであろう。つまり太陽の数とは無限ではなく、十個あると考えられ、その一個ずつが、毎朝桑木から生れて、天に昇ると信じられていた。したがって、桑木とは太陽を生む木であり、そこから生れた児とは太陽でなくてなんであろう。(『天空の舟 小説・伊尹伝宮城谷昌光
 ユゴーはからくり人形を見つめた。とても修理できるとは思えない。しかも人形は以前よりずっとひどい状態だ。けれど、まだ父さんのノートがある。ノートの絵を見ながら、なくなった部品を作り直すことができるかもしれない。
 やらなきゃ。その気持ちがだんだんと強くなる。もしこの人形を修理することができたら、ぼくはひとりぼっちじゃなくなる。
(『ユゴーの不思議な発明』ブライアン・セルズニック:金原瑞人訳)