また、「グローバル化」が叫ばれる21世紀の世界では、どの国どの地域の人々であれ、また好むと好まざるとにかかわらず、自らの文明意識に支えられた明瞭なアイデンティティ感覚が求められるようになる。この点で、新しい世紀の門口に立って、世界を見渡しても現在の日本人ほど惨めな状況に立たされている人々は他にないように思う。なぜなら、いまこの国では、上述の「本当の歴史」とは何か、という歴史叙述をめぐる問題の混迷とともに、自らの属している文明、この日本という国のトータルな歴史観が、「戦後」という重圧にほとんど完全なまでに押し潰されてしまっているからである。(中西)『日本文明の主張 『国民の歴史』の衝撃』西尾幹二、中西輝政
日本近代史