「俺はたくさん人を殺してきた。この手は血に染まって、洗っても洗っても染(し)みがとれない。この修行者はこんな俺に本当のことを言ってくれている。この人についていこう」
彼は手にもっていた弓や剣をすべてがけから投げ捨てて、自分の額をブッダの足につけてひれ伏して言った。
「あなたのことばを聞いて、自分が行なってきた恐ろしいことを断じてやめなければならないという気がしてきました。どうか弟子にしてください」
ブッダはそのとき
「来たれ、修行僧よ」
と一言、言われた。そのことばだけで、彼はブッダの弟子として修行僧になったのである。
(『ブッダ物語』中村元、田辺和子)
仏教