古老の語りや古い新聞は、思いのほか役に立った。清流と戯れた話もあるが、暗渠化直前の桃園川は、汚く面倒なドブにすぎない。しかし、そのような川をこしらえたのも我々だ。そこにはさまざまな感情が渦巻いていた。どんな「ドブ」にもものがたりがあり、地形が記憶を紡ぎ出す。過去と現在、街の裏と表、昭和と自分、生と死などが交錯する場所が暗渠だった。(『暗渠マニアック!』吉村生〈よしむら・なま〉、高山英男)