当用漢字は世間で考へられてゐる様に、仮名文字論者やローマ字論者の手によつて提案され実施されたのではない。当時の国語審議会委員の大部分は保守派の国語学者、国文学者だつたのです。彼等は、国字をローマ字化した方がよいと考へてゐたアメリカの教育使節団の勧奨に遭つて、そんな事になつたら大変だといふ憂国の情から、当用漢字を制定し、それを防波堤として、それ以上の漢字追放を阻止しようと考へたのです。(『日本を思ふ福田恆存〈ふくだ・つねあり〉)