例えば17世紀後半を主たる活躍の時期としたニュートン(重要な主著の一つ『光学』の出版は18世紀に入ってからのことであり、ニュートン自身は1727年まで生きたが)は、決して「近代科学者」ではない。むしろ、ここで言う「魔術」に近い自然理解を持っていたと言うことができるだろう。それは、彼が錬金術に生涯没頭していたという事実だけから言うわけではない。むしろ、彼の自然理解の全体が、このような15・16世紀ルネサンスの思想的な背景を色濃く背負っているからである。(『奇跡を考える 科学と宗教』村上陽一郎)

科学と宗教