第二次世界大戦の余燼なお冷めやらぬころ、業界屈指の研究志向型企業である
メルク社のトップ、ジョージ・W・メルクは、同社の科学者に向けて次のような信条を披瀝(ひれき)した。「薬は人々のためのものであり、儲けのためのものではないことを、われわれは深く肝に銘じておくことにしよう。儲けはあとからついてくるものであり、このことさえ忘れなければ、儲けが消えてなくなることなどありえない。このことを肝に銘ずれば銘ずるほど、付随する儲けは大きくなるものである」。メルクのこの言葉は、今もなお同社の年次報告書に記載されており、医学界の大きな催しや会合のときはいちばん目立つところに展示されている。(『
新薬ひとつに1000億円!? アメリカ医薬品研究開発の裏側』メリル・グーズナー:東京薬科大学医薬情報研究会訳)