ノブレス・オブリージュ(高貴な者の義務)といって、欧米では貴族や裕福な家に生まれた男は、社会のリーダーの義務として戦場に出るのが伝統だった。安全な後方から「突撃!」とけしかけるのではなく、「俺に続け!」と真っ先に切り込む者を「リーダー」と呼ぶ。だからアメリカの歴代大統領のほとんどが軍隊経験者である。たとえばケネディ大統領は太平洋戦争で魚雷艇に乗って戦い、兄は戦死している。
ところが現在、アメリカ議会の上下院議員のうち軍隊経験者はわずか5%、自分の子供を軍隊に入れている議員はたった7人しかいない。デューク大学の調査によれば、大統領の閣僚や議員に軍隊経験者が少ない時ほどアメリカは戦争を起こしやすくなるという。自分や身内が兵士でないと、戦争の痛みはわからない。
(『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』町山智浩)