強烈な光線が闇を切り裂いた。その中に、必死に逃げまどう女の姿が浮かび上がる。次の瞬間、銃声が鳴り響いた――テロリストがテロリストに向けて放った銃弾。一発目が背骨の低部に命中したのだろう、女は大きくのけぞり、金髪が滝のようにはじけて流れ落ちた。つづいて三発、狙撃手の自信のほどを示すように間を置いて発射され、襟首と頭部に命中した。女は泥と砂の小山のほうへ吹っ飛び、その指が地面をかきむしる。血に染まった顔はしかし、地面に突っ伏しているためによく見えない。やがて断末魔の痙攣が女の全身を走り抜け、と同時に、すべての動きが停止した。
彼の恋人は死んだ。彼は自分がやらねばならないことをやったのだ。ちょうど、彼女が自分のしなければならないことをしたように。彼らはお互いに正しく、お互いに間違っていた。
(『狂気のモザイク』ロバート・ラドラム:山本光伸訳)