中島梓●ただ着物というのは、着物だけじゃないんですよね。すべてと結びついている。
杉浦●立居振舞。
中島●立居振舞もさることながら、まず針が持てなければいけない。というのは、自分で半衿をかけなければいけないでしょう。もちろん自分で着られなければいけないというのもそうです。髪も自分でなんとかできなきゃいけないというのもある。あるいは手入れもできなきゃいけない。自分で洗い張りしろとまでは言わないけれども、少なくともそのくらいまめに手入れをしなければいけない。
とにかくなにかといろんな文化と全部つながっている。だからその文化の型というのが、いまの日本の普通の文化とは非常に合わない。たとえば電車に乗っているんだって、歩きづらいとか、立っていると大変だとか、いろんなことがある。非常に広いものと結びついちゃっているから、広い範囲で受け入れられなくなってきているんじゃないかと思う。
(『江戸へようこそ』杉浦日向子)
江戸