会津藩では、それに「童子訓」がいわば必修科目で、これはすべて暗誦させられた。『小学』を基礎にした金言名句、小話のたぐいを編集した冊子で、文字通りの小学読本である。
 日常の起居についての躾(しつけ)は、別にいろいろとあった。
「寒くても手を懐ろに入れるな」
「暑くても扇子を使ったり、肌脱ぎになってはなりませぬ」
「門の敷居、畳の縁(へり)を踏むな」
「来客のときは大声を出すな。奴僕はもちろん、犬猫のたぐいでも、叱るのは客に失礼である」
「人前で退屈の風を見せてはなりませぬ」など、など。
 しかし、こういうことは物心ついたころから、おのずと身について育つので、それが窮屈だとか、喧(やかま)しいとかいう感じは、誰も持たなかった。
(『守城の人 明治人柴五郎大将の生涯』村上兵衛)

柴五郎明治維新日本近代史