だが、木村は本当に乱取りだけで9時間やった。まず警視庁へ朝10時から出稽古へ行き、昼食を食べて拓大で3時間、そして夕方6時から講道館、そのあと深川の義勇軍道場、牛島塾に戻ってくるのは夜11時である。
そして夕食をかき込むと、ウサギ跳びをしながら風呂に行き、またウサギ跳びで帰ってくる。すぐに腕立て伏せを1000回やって、そのあとバーベルを使ったウェイトトレーニング、巻き藁突きを左右1000回ずつ、さらに立木への数千本の打ち込みである。布団に入るのは午前2時過ぎ。そしてそこからまた頭のなかでイメージトレーニングが始まった。眠ってしまいそうになると自分で体をつねってその痛みで奮起しイメージトレーニングを続ける。眠るのは4時過ぎである。睡眠時間は3時間もなかった。
(『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』増田俊也)