結局、都市というのは、凡庸であることがひとつの才能と見なされるような場所なのだ。それどころか、凡庸は、都市生活者にとって唯一の有効な才能だ。なぜなら、都市という人間の集積場が、そこに集まる一人ひとりの個人に期待する個性は、不特定多数の他人と似ているということだけだからだ。(『山手線膝栗毛小田嶋隆