「
時間のより深い次元」ということをやや唐突な形で述べたが、たとえて言うと次のようなことである。川や、あるいは海での水の流れを考えると、表面は速い速度で流れ、水がどんどん流れ去っている。しかしその底のほうの部分になると、流れのスピードは次第にゆったりしたものとなり、場合によってはほとんど動かない状態であったりする。これと同じようなことが、「時間」についても言えることがあるのではないだろうか。日々刻々と、あるいは瞬間瞬間に過ぎ去り、変化していく時間。この「カレンダー的な時間」の底に、もう少し深い時間の次元といったものが存在し、私たちの生はそうした時間の層によって意味を与えられている、とは考えられないだろうか?(『
死生観を問いなおす』
広井良典)