被疑者は密室である取調室に閉じ込められてしまうと、心理的に追い詰められてゆく。人間というものは生きている限り、他者とのかかわりのなかにいる。平素はそのことの重大性に気づかないが、法的強制によってそういうかかわりから遮断されると、心の安定性を失い不安でたまらなくなる。妻はこの事態をどう受け止め、どのように処しているのか、子供にはどう説明したのだろうか。同僚は、両親は、親戚は、近所の人は……。
被疑者は多くの場合、この心理的重圧のなかで自供に追い込まれてゆく。
(『警官汚職』読売新聞大阪社会部)