ベランダに腰を下ろし、その老人は語り始めた。
「幸福とは、心の状態のことだ。決して金で買えるものではない。生きることの意味を正確に理解することで、その心の状態を進化させることしか私たちにはできないのだよ。いまの世代は、生きるとは何かの理解を急速に失いつつある。だれもかれも、最小限働いて、最大の給料がもらえるような仕事を探し始めている。そして、世界中の金品を集めても買えないような、果てしない欲望にとらわれているのだ」
(『東洋の呼び声 拡がるサルボダヤ運動』A・T・アリヤラトネ:山下邦明、林千根、長井治訳)