ところで第4期(※紀元600-1200年/ヒンドゥイズム興隆の時代)に入ると、インドでは正統派バラモン系の思想・宗教のみならず、非バラモン系の思想・宗教にも新たな運動が台頭してくる。タントリズム(密教)の台頭である。
タントリズムとは、儀礼とシンボルの機能を重視し、「シンボルは宗教の目的としての究極的なものを指し示すことができる」という前提に立つ宗教形態である。サンスクリットの伝統的な学問をおさめたエリートたち――あるいは専門家たち――の宗教とは異なって、宗教の専門的知識のない、一般の人々も直接参加できたところにこの宗教形態の特質がある。またタントリズムのテーマも、ヴェーダーンタ学派のそれと同じく、宇宙原理と自己(個我)との同一性の直証であった。
(『はじめてのインド哲学』立川武蔵)
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