「考える葦」や「クレオパトラの鼻」のように明るく洒脱な雰囲気のある句はむしろ珍しく、ほとんどは人間の醜さ、卑小さ、はかなさを告発する文章で、気が滅入ってしまう。『
パンセ』の大部分が、キリスト教を弁証し、読者をあわよくば信仰に誘うことを目的とした論考の草稿であることから、聖書からの引用、複雑で神秘的な教義の解説、キリスト賛美の文章も多数にのぼり、その箇所については、よほど熱心な信者でないかぎり共感を抱くことはないだろう。(『
パスカル『パンセ』を楽しむ 名句案内40章』山上浩嗣〈やまじょう・ひろつぐ〉)