言語は基本的に左脳でやっています。漢字を読むところは、側頭葉です。一方、仮名を読むところは頭頂部に近い上のほうなんです。だから左脳の上が壊れると仮名が読めなくなって、下が壊れると漢字が読めなくなる。
面白いのは、漢字読みができなくなった人は、漫画がわからなくなることです。実は漫画は漢字と同じで、意味を表す図形だからです。それに音声を振っている。これが、吹き出しです。吹き出しは、ルビなのです。
日本語の成立と同時に、漫画が成立してきます。絵があって詞書(ことばがき)が付いてくる。それが、いつのまにかその詞書が漫画の中では吹き出しに変わってくる。吹き出しを会話だと思っている人が多いけれど、そうじゃない。あれはルビです。あの部分は音声、音なのです。そして漫画の絵そのものが漢字なのです。
(『バカにならない読書術』養老孟司、池田清彦、吉岡忍)