自衛隊市ヶ谷駐屯地の総監室のバルコニーに立つ三島の姿を目撃したという、当時16歳だった女性がいる。
 その日、彼女は偶然、市ヶ谷にいたのだ。ロックグループ「はっぴいえんど」が所属していた事務所、「風都市」に、その日、彼女は遊びに来ていた。(中略)
《あのときのことはすごく鮮烈に覚えている。》
 そして、
《あのとき、60年代末のムーヴメントが終わった。「これで時代が変わるなあ」って思ったことを覚えてる。あれと、あさま山荘事件(72年)でね。「時代は変わる。じゃあ、作詞家になるかな」って。》
 この16歳の少女は、前年に15歳で作詞家としてデビューしており、翌年には作曲家としてもデビューする。そして、この少女がシンガーソングライターとしてデビューするのは1972年だ。荒井由実、という。
(『昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃』中川右介)

三島由紀夫