少なくとも私が教わった福音派キリスト教の根底にあるのは、聖書の言葉一つ一つが神の霊の導きのもとに真実を伝えるために書かれた、文字通りに読んで間違いのないものであると無条件に信じることだった。ところがそう信じることは、どう見ても反駁の余地のないほど間違っており、聖書は数千年の間に大勢の人々によって書かれた文書であれば当然予想されるような、おびただしい明らかな間違いや矛盾が山のようにあることに突然気づいた私は、面食らい、精神的な拠りどころを見失ってしまったような気持ちになった。その結果、こういう経験をした多くの人びとがそうであったように、私は騙されて高価な偽文書を買わされたような気分になって腹が立ち、キリスト教信仰を捨てた。(『イエス・キリストは実在したのか?』レザー・アスラン:白須英子訳)