ポサドニック号事件で海舟が、ロシアと決定的に対立、断絶せずにロシア・カードを生かしていたと考えると、戊辰戦争に際して、ロシア公使が「いくらでも金を貸しますから、戦争の始末をつけなさい」と海舟にうるさく言ってきたと海舟が言っていることの意味がわかってくる。西郷隆盛が江戸総攻撃を考えるにあたって、一番恐れていたのはこのロシア・カードではなかったか。榎本武揚が蝦夷地に艦隊を率いて逃亡するにあたって、一番当てにしていたのは、このロシア・カードではなかったか。(『勝海舟と幕末外交 イギリス・ロシアの脅威に抗して』上垣内憲一)
勝海舟/日本近代史