実は、ベネディクトの『菊と刀』抜きにしてアメリカにおける日本研究は語れない。事実、この本が出た1940年代のアメリカ及び西欧において社会科学者の多くは、国民性の研究に専念していた。特に人類学者の研究は、ソ連、アメリカ、日本の国民性に集中していた。中でも『菊と刀』は今日なお無視しがたい影響力を持っている。そしてミアーズとの関係で言うならば、『菊と刀』と『アメリカの鏡』とは、ほんの2年という短い時間をおいただけで、同じボストンのホートン・ミフリン社から出版されているのである。にもかかわらず、この2冊のその後の運命ほど好対照を見せているケースも珍しい。(『忘れられた日米関係 ヘレン・ミアーズの問い』御厨貴、小塩和人)
ヘレン・ミアーズ